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もっと詳しく 消費税の本則課税と簡易課税を中学生でもわかるように解説
消費税
投稿日: 2025/12/10(水)
結論(要点まとめ)
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本則課税は「売上で預かった消費税 − 仕入で払った消費税」を実際の請求書等に基づいて計算する最も正確な方法。インボイスの有無や実際の仕入税額がそのまま結果に効きます。国税庁
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簡易課税は小規模事業者向けで、実際の仕入税額ではなく「売上にかかる消費税 × 業種ごとのみなし仕入率」で控除額を決める簡便な方法。ただし要件(基準期間の課税売上高が5,000万円以下等)があります。国税庁+1
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**インボイス制度(適格請求書等保存方式)**の開始(令和5年10月1日)により、買手が仕入税額控除を行うためには原則として「適格請求書(インボイス)」を保存していることが要件となりました。これが簡易/本則どちらの選択にも影響します。国税庁+1
1) 本則課税の仕組み(詳解)
● 基本式
納付税額 = 売上に係る消費税(預かった税) − 仕入に係る消費税(支払った税)。
売上・仕入のそれぞれについて、請求書・領収書・帳簿の金額を使います(軽減税率が絡む場合、税率ごとに分けて計算)。国税庁
● 実務でやること(手順)
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期間の売上(課税売上)を税率ごとに集計 → 売上消費税を算出
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期間の仕入・経費のうち課税仕入れを集計 → 仕入消費税を算出(適格請求書が必要な場合あり)
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売上消費税 − 仕入消費税 を計算 → 納付または還付の額確定
● 注意点
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軽減税率(飲食料品など)があるため、税率別の管理が必要。
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インボイス制度下では、買手が仕入税額控除を行うためには「適格請求書」を保存していることが重要(保存がないと控除ができない場合がある)。国税庁
2) 簡易課税の仕組み(詳解)
● 概要
簡易課税は、実際の仕入税額を計算せず、売上にかかる消費税 × みなし仕入率 を控除として用いる方式です。計算が単純で、帳簿事務を軽くできますが、業種と売上規模の条件があります。国税庁
● 利用条件(重要)
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基準期間(個人は前々年、法人は原則前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下であること。国税庁
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簡易課税を受けるには**所轄税務署長に「消費税簡易課税制度選択届出書」**を提出すること(届出の提出時期など運用は国税庁の手引きを確認)。国税庁+1
● みなし仕入率(主要) — 業種別(代表)
(国税庁が定める区分と率)
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第1種(卸売業)…90%
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第2種(小売業)…80%
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第3種(製造・建設等)…70%
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第4種(飲食店等)…60%
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第5種(サービス業等)…50%
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第6種(不動産業)…40%
(細かな該当事業は国税庁の一覧を参照)。国税庁
● 計算式(例)
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売上にかかる消費税 = 100万円
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みなし仕入率 = 60%(飲食店)
→ 控除 = 100万円 × 60% = 60万円
→ 納付 = 100万円 − 60万円 = 40万円
● 届出の留意点
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一度簡易課税を選択すると 原則2年間は取りやめられない(継続適用のルールあり)。届出のタイミングと継続要件に注意。国税庁
3) 本則 vs 簡易 — 実際の比較と判断方法(具体的手順)
どちらが得かは事業ごとの「売上に対する実際の仕入消費税の割合(実際の仕入率)」とみなし仕入率を比べればわかります。具体的にやってみましょう。
判断フロー(実務で使える)
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過去1〜2年分の決算で「売上消費税」と「仕入消費税」を集計する。
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実際の控除率(仕入消費税 ÷ 売上消費税)を計算する。
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その実際控除率が、業種のみなし仕入率より大きければ本則が有利、小さければ簡易が有利。
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ただし簡易を使うには基準期間の売上が5,000万以下かつ届出が必要。さらに選択後2年縛りがある点を考慮。国税庁+1
実例(数字で比較)
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ある飲食店(みなし率60%)
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過去の集計で:売上消費税100万円、仕入消費税実額70万円(=実際控除率70%)
→ 本則であれば納付 = 100 − 70 = 30万円
→ 簡易であれば納付 = 100 − (100×60%) = 40万円
→ 本則の方が10万円有利 → 実務上は本則を選ぶほうがよい(ただし帳簿・請求書の整備が前提)。
4) インボイス制度(適格請求書等保存方式)の影響
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開始日:令和5年(2023年)10月1日から運用開始。インボイス(適格請求書)制度により、仕入税額控除を受けるためには、原則として「適格請求書」を保存している必要があります。国税庁+1
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簡易課税の場合でも影響あり:簡易課税は仕入額そのものを使わないが、取引先が適格請求書を発行しない(発行事業者登録していない)と、その取引で買手が本則で仕入税額控除できないなどの取引構造変更が起きています。つまり「取引先がインボイス発行事業者かどうか」を踏まえて制度選択や価格交渉を考える必要があります。国税庁
5) 実務上のチェックリスト(すぐ使える)
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基準期間の課税売上高が5,000万円以下か確認する(簡易要件)。国税庁
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簡易課税を使うなら所轄税務署へ「簡易課税制度選択届出書」を提出する(提出期限に注意)。国税庁
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過去2年分の売上消費税と仕入消費税を集計し、実際控除率を計算して比較する。
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取引先が適格請求書発行事業者かを確認する(インボイス制度対応)。インボイスが得られない取引の扱いを検討する。国税庁
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軽減税率の対象取引がある場合、税率別の集計・記帳を整備する。国税庁
6) よくある質問(FAQ)
Q. 「簡易課税を選んだら帳簿は不要ですか?」
A. いいえ。簡易課税でも売上や取引の記録は必要です(届出・税務調査対応などのため)。また税額計算自体は簡単でも、税務書類は保存・整理する必要があります。国税庁
Q. 「インボイスがない仕入は全部控除できないの?」
A. 原則は適格請求書がないと仕入税額控除が受けられない点に注意(ただし過渡的な特例等があるため、個別の事例は国税庁の周知資料や税理士に確認)。国税庁+1
Q. 「簡易課税をやめたいときは?」
A. 簡易課税の選択を取りやめる場合、基本的には2年間の継続適用義務があるため届出タイミングに注意。国税庁
7) 追加の具体例(半期・四半期で計算する場合)
消費税の納付は課税期間(通常年間または事業者により半年・四半期等)ごとに行います。期間ごとに売上消費税と仕入消費税(または簡易の場合は売上消費税×みなし率)を計算し、確定申告(消費税申告)で申告納付します。期間で数字が変わる場合は期中でのシミュレーションを行って年間の有利不利を判断してください。国税庁
